コロナ後の世界における3Dプリント技術の未来

2020/09/16 23:53:26

過去数十年間、製造における多くのプロセスや技術的な変化の中でも、3Dプリント技術は、最も注目を集め、台頭しつつある未来的なコンセプトの1つです。COVID-19の世界的流行とその経済的影響が減速しある程度の落ち着きを取り戻した時、3Dプリント技術は、以前とは大きく異なって見える可能性のある新しい技術と言えます。

まず、3Dプリント技術の採用が現在どこにあるのかを考えることが重要です。新しいテクノロジーはある程度の牽引力を持っていますが、他の次世代の製造テクノロジーの影に若干隠れているもの事実です。業界は、自動化、IoT、高度な分析技術などを広く受け入れ、取り入れていますが、3Dプリント技術の実務採用は遅れています。多くの業界で利用できる (英語、サイト外記事) にも関わらず、このテクノロジーが持つ本当の実力は未だ十分に認識・活用されていません。

Manufacturing Patents- 3D Printing vs Automation図1. 2010年から2019年までの間、オートメーションと製造に関連する特許の数と
3Dプリント及び製造に関する特許の数の比較 情報提供元:Wellspringの技術検索結果データ
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製造業の3分の2では3Dプリンターをある程度活用(英語、サイト外記事)していると報告されているものの、未だ新しい技術としての位置付けから脱していません。従来の方法を完全に置き換えるのではなく、主にプロトタイピングと短期間での設計に利用されています。従来の製造では、完成品を製造するために使用される複数の技術が存在し、これらのプロセスの多くは、物体を形作るために材料を切削するという方法を採っています。対照的に、3Dプリントでは、3Dオブジェクトをレイヤーごとに積み上げるという追加を行うプロセス(英語、サイト外記事)です。コンピューター支援の図面作成(CAD)ソフトウェアが、デジタルモデルの作成に使用されています。CADで作成されたファイルはスライス(分割)(英語、サイト外記事)され、3Dプリンターが理解できる言語で送信されます。常に状況は変わりつつあるものの、多くの人にとり、このテクノロジーは、実際に利用する部品や製品を生産するために従来の製造プロセスと競えるほど成熟しているとは見なされていません。

この考えは新たな使用事例が出てくる度に議論の的となります。3Dプリントの実使用事例と実用的なアプリケーションが注目を集めるように、積層造形の製造事例はますます増えています。インビザライン(透明マウスピースによる歯科矯正)技術が歯科業界に与える影響を見てみましょう。同社のカスタマイズされたクリアアライナ歯科矯正は、過去20年間、消費者の間で人気が高まってきた従来の矯正技術に対する魅力的な代替案を提供します。創業以来、同社は矯正器具の設計を決定するために、口腔のデジタルスキャンを使用する彼らのシステムで80,000人以上の歯科医と歯科矯正医を訓練(英語、サイト外記事)してきました。患者に合わせてカスタマイズされた矯正器具は3Dプリントされ、治療を開始できる医院へ送付されます。医師は手動で調整を行うのではなく、患者の経過観察をするだけで良いのです。

国際宇宙ステーションの宇宙飛行士でさえ、この技術を実験しました。メンテナンスに必要な部品とツールを送るために貨物補給任務に頼るのではなく、宇宙飛行士は幾つかのテストを実施し、宇宙船で使用するための複数の機能的なアイテムを製造(英語、サイト外記事)しました。3Dプリント技術は従来の方法を完全に置き換えるものではありませんが、プロトタイピング以外にも幅広い製造工程に組み込むことができます。

製造における3Dプリント技術適用に関する出版物の数Publications on 3D Printing Applications in Manufacturing図2. 積層製造方法を適用することを検討している出版物の数は、年々増加
情報提供元:Wellspringの技術検索結果データ(英語、サイト外記事)


現在のコロナ禍において、3Dプリント技術は再び注目される事例を生み出しています。PPE(個人用防護具)や医療機器の不足に直面している病院では、企業やコミュニティができる限り支援を提供するよう求められています。GapやCanada Gooseのような小売ブランド(英語、サイト外記事)は、消費財から、第一線の医療従事者および患者向けのスクラブ(医療用白衣)やガウンの生産へシフトしました。フォードやGMのような自動車メーカー(英語、サイト外記事)は、人工呼吸器を製造するために部品を転用することで対応しています。現在、3Dプリンターを使用できる企業は、初期段階である製品設計から最終用途の商品を製造するまでの方法を再考しています。ブリジストンのテクニカルセンター(英語、サイト外記事)の従業員は現在、地域の病院に寄付するためのフェイスシールドを製造しています。HPの3D R&Dセンターでは、ハンズフリー ドアオープナーとマスク アジャスター(英語、サイト外記事)を、ベンチレーターパーツとフェイスマスクの設計がテストと検証段階にある間に製造しています。Carbon(英語、サイト外記事)Origin(英語、サイト外記事)などの3Dプリンター会社は、独自の技術を使用して鼻腔用テスト綿棒を製造しています。

3Dプリンターを利用できますか? Flintbox for COVID-19のサイトでは人工呼吸用マスクフェイスシールドの3Dプリント方法が閲覧できます。

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PPEと医療機器の需要が急増していることが、これらの不足の一因となっていることは否定できません。ただし、グローバルサプライチェーンの混乱(英語、サイト外記事)も在庫不足に大きな影響を与えています。積層造形の柔軟性を考えると、このテクノロジーは、生産と調達の遅延に関連する不足を埋められる可能性があります。3Dプリンターは1つの製品または設計に縛られないため、サプライチェーンの柔軟性と復元性に貢献することができます。プリンターはポータブルで、対象物をオンデマンドで作成できるため、この技術によって製造をより分散することができます。従来の製造方法と比較して、部品、コンポーネント、プロセスの複雑さが軽減され、よりカスタマイズが可能となります。このテクノロジーの特徴の一つとして、パンデミック、自然災害、政治的混乱などの世界的ショックによる突発的な課題へ対応に適しています。

コロナ後の世界で、3Dプリントがより広くアクセスや利用が可能となり、受け入れられるようになる可能性はあるでしょうか? 以下は、3Dプリント製造機能で多くの業界へ貢献することに尽力を続ける最も有望な新興企業例です。※以下の各リンクはサイト外の英語ページに遷移します。

AREVOは、実際に利用される製品アプリケーション向けに、超強力・軽量の複合部品のデジタル積層造形を直接製造可能にする技術を開発しています。(もっと見る

Relativityは、ロボット工学、ソフトウェア、および3Dプリント技術を垂直統合し、航空宇宙製造をデジタル化しています。(もっと見る)  

HEXRは、3万点のデジタルモデルを使用してカスタマイズされ、3Dプリントされた保護ヘッドギアにより、ヘルメットの安全性における新しい基準を創造しています。(もっと見る)  

Markforgedは、工具、治具、機能プロトタイピング、および高価値の実際に利用される製品生産用の3D金属およびカーボンファイバープリンターを製造しています。(もっと見る)  

ICONは、独自の3Dプリント技術、ロボット工学、ソフトウェア、高度な材料技術により、住宅建設と建設へのアプローチを新たに創造しています。(もっと見る)  

Tailored Fitsは、3Dスキャンおよび印刷技術を使用して、個々のフットウェア、スポーツ用品、保護具に対し解剖学的にフィットするソリューションを提供しています。(もっと見る

Natural Machinesは、食品グレードの、食品としても安全な素材が採用された、食品専用の3D食品プリントキッチン器具Foodiniを製造しています。(もっと見る)  

Craft Healthは3Dプリント技術テクノロジーを活用して、患者と消費者が薬を服用するプロセスを簡素化しています。(もっと見る)  

Spectroplastは、機能的で高性能な積層造形技術を使用して、実際に利用されるシリコーン製品を製造しています。(もっと見る)  

DyeMansionは大量生産可能な最終仕上げシステムを製造し、3Dプリントされた部品を消費者製品および工業製品に活用しています。(もっと見る)  

Nano Dimensionは、3Dインクジェット、3Dソフトウェア、ナノ材料技術を組み込み、エレクトロニクスの設計と製造の方法を変革しています。(もっと見る

Inkbitは、3Dプリント技術とマシーンビジョンを組み合わせた積層造形プラットフォームを提供しています。(もっと見る)  

Nanofabricaは、マイクロおよびナノ製造に3Dプリント技術の力を採用し、ロボット工学や半導体などの市場における潜在能力を引き出しています。(もっと見る

他のトレンド市場に関するこのような洞察については、データスポットライトシリーズ全体(英語、サイト外記事)をご覧ください。また、合わせて技術探索ツール Wellspring スカウト も是非お試しください。

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写真提供: Ricardo Gomez Angel on Unsplash

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