コロナ禍において急成長を遂げる企業の共通点とは?〜“The 2021 R&D and Innovation Agenda”より〜

2021/10/26 4:52:15

本記事は、ウェルスプリング米国本社より発表された年次レポート

“The 2021 R&D and Innovation Agenda”

の内容を全3回に分けて日本語でお届けする記事となります。今年で3回目となる本レポートは、米国を中心としたイノベーターが着目するコンテンツとして毎回注目を集めています。


本記事は全3回のうち第一回の記事となります。記事全文は英語にてこちらからお読みいただけます。


本レポートの概要について

本レポートは、アメリカおよびイギリスの拠点を置き売上が年間$1B以上の企業において、中間層〜上層の立場でイノベーションを推進するプロフェッショナル300人に49の質問を通じた電話調査を元に作成されています。彼らが企業内において携わっている役割は以下のような割合となっています。

(質問回答者の社内における役割内訳)

また分野についても以下のように多岐にわたっています。

データを分析する上で、イノベーションに関する行動と売上の向上の相関関係を紐解きつつ、更なる解析を2020年の冬から2021年の春にかけて実施した複数回のインタビューの内容と合わせて結論づけたものとなります。


(質問回答者の所属する企業の業界内訳)

イノベーションにおけるメインプレイヤーは大企業?それともスタートアップ?

大企業はイノベーションを起こすことができるのでしょうか?もしそうであれば、急成長企業は他の企業とは異なる方法でイノベーションを起こすのでしょうか?これらの基本的な質問は数十年に渡る議論のトピックとなり続けています。それらの多くは企業のイノベーション管理(またはその欠如)として執筆もされています。このトピックに関する多くの熱や意見に関わらず、私達はその解に未だ近付けていません。

戦略コンサルタントは、大企業が強力なイノベーターになることができ、またそうあるべきであると主張することがよくあります。しかし、彼らが「より良い経営者からのサポート」から「企業文化の改善」に至るまでの漠然とした処方箋に注意を払える場合に限ります。
次に、ベンチャーキャピタルとスタートアップコミュニティがあり、イノベーションは起業家の独占的な活動と見なしています。この見方では、企業はイノベーションを生み出す存在ではなく、スタートアップからそれらを獲得するために存在するとされています。従って、経済界の「真の」イノベーターに富をもたらすという考え方です。

どちらの視点にも真実の核が含まれています。しかし、何の視点にも深刻な欠点があります。議論が還元的すぎであり、意味合いや深さが不足しており、自己利益が中心となっています。改めてその事実や現状を直視し、正しい方向や活動へ向かう時が来たのではないでしょうか。

今年で3年目となる2021年度の ”The 2021 R&D and Innovation Agenda" において、私達は意味のある解の探求を進めました。これまでと同様に、企業のイノベーショントレンドに関する最新情報を纏めています。今年は新たに、私達はその研究範囲を拡大、更に深め、基本的な質問に対する解を求める研究をしました。何よりも大企業がイノベーションを起こすことができるか、もしできるのであれば、最も成功している企業がどのようにイノベーションを起こすことができているのかを知りたかったのです。

調査結果は驚くほど一貫しており、統計的にも顕著でした。簡単な答えは「Yes and Yes」です。大企業は効果的にイノベーションを起こすことができ、急成長企業は意図的に他の企業とは異なる方法でイノベーションプログラムをデザインし管理しています。更に、イノベーションへの取組みの違いは、同業他社と比較して優れた成長と成果は直接的に関係している事が分かりました。

1年以上もの間に、想像だにしなかった一連のショックと混乱が、イノベーションのサプライチェーンだけでなく、実際に世界経済を根本的に変えました。

 

本レポートは大きく二つのセクションから成り立っています。

  • セクション I:コーポレートイノベーションに対する熱の高まりと根強い課題

セクション I では、2021年における企業のイノベーションの優先度と投資について説明します。控えめに見たとしても、かなりの積極性を伺えます。イノベーションへの投資は大幅に増加し、イノベーションの優先順位を上げる意欲があり、イノベーションから生まれる成果への確信があるようです。一方で、そこには楽観性も伴い、今日の企業は最も重要な場所でつまずき続けていることも分かります。イノベーション戦略の実行において、多くの企業はプロセス、管理構造、説明責任メカニズムなどイノベーション成功の基礎が未だ担保されていない事に悩まされています。

  • セクション II:高成長企業がもつイノベーションの習慣

最も印象的な結果はセクション II にあります。このセクションでは今日の最も高成長率を誇る企業における一般的なイノベーション実践を明確にしています。この分析では、50近くの調査項目に基づき、業界全体の米国および英国を拠点とする企業の中間層から上層の300人のイノベーションリーダーから定量的な調査データを収集しました。データに基づき、どのイノベーション実践が企業レベルで一流の財務実績と相関するかを予測する統計モデルを開発しました。

イノベーションに関連する活動からリターンを得ている企業に共通する活動とは?

コロナは売上に大きな影響を与えたことは言うまでもありませんが、中でも大きなリターンを生み出した企業には共通して意図的に実施していた活動やプログラムがありました。

その内容が以下4つとなり、本記事では“Innovation Habits”と定義づけています。

  • “Horizon 3”と呼ばれる、世界に未だ価値として存在しない領域へ戦略的に偏らせた投資活動
  • アーリー期のテクノロジーに対する集中的な研究開発活動
  • 特定のパートナーとの集中的な連携
  • 中央管理型のイノベーション活動

これらは一見当たり前に思われる活動ばかりですが、むしろこのような活動を一貫して続けている企業はごく少数です。四半期ごとの結果への固執、アナリストや報道関係者への対応など、短期的な事象に忙殺されることで、目的や一貫性をもって取り組むことができていない企業がほとんどで、それが結果にもあらわれています。

本レポートは「コーポレートイノベーション」に関わる全てのプレイヤー 〜企業の上層部や社員だけでなく、投資家や役員陣、中央省庁、メディア関係者に至るまで〜 にとって役に立つ内容であることを確信しています。コロナ禍である今だからこそ、イノベーションに関わる全てのステークホルダーが「ショートターミズム」(短期間の結果ばかりを追い求める思想)から脱却すべき時ではないでしょうか。ただよく見せるためだけではなく、内実を伴ったイノベーションを起こすために今真剣に向き合うべきであることをこのレポートは示唆しています。


第二回(全3回)となる次回は、コロナの影響による売上減など根本的な課題を抱えながらも、全体として非常に高いイノベーションに対する意識を持っていた直近の企業の活動と、実際に直面した課題を具体的に紐解いていきます。

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